
障害年金の手続きは、「初診日」を決めるところから始まります。
初診日とは、その病気やけがでいちばん最初に病院にかかった日のことです。
この日が決まらないと、年金事務所は請求そのものを受け付けてくれません。
なぜそこまで重要かというと、初診日を起点にして次の3つが決まるからです。
- どちらの年金がもらえるか(障害基礎年金か、障害厚生年金か)
- 保険料をきちんと納めていたか(納付要件)をいつの時点で見るか
- いつの時点の障害の重さで審査されるか(障害認定日)
そして、この初診日を調べて証明するのはご自身(請求する側)の役割です。
ご自分で請求を進めた方がいちばんつまずくのが、まさにこの初診日の確定です。
“この記事でわかること”
- 初診日になる受診・ならない受診の見分け方
- 初診日を証明するために必要な書類
- 病名が複数ある・再発した・生まれつきなど、迷いやすいケースの考え方
- カルテがない、病院がなくなった場合の対処法
目次
1.初診日とは?
初診日とは、障害または死亡の原因となった病気やけがについて、初めて医師等の診療を受けた日をいいます。
もう少し正確にいうと、「医師または歯科医師」から「治療、または療養に関する指示があった日」です。
1-1.初診日になる/ならない 早見表
○ 初診日になる
| × 初診日にならない
|
まちがえやすいのが転院したケースです。
いま通っている病院ではなく、同じ傷病で最初にかかった病院の受診日が初診日になります。
2.初診日はどうやって証明する?
初診日は、自己申告だけでは認められません。病院が作成した書類で証明します。
初診の病院に、「受診状況等証明書」という書類を作成してもらってください。
この書類には、発病の時期・受診までの流れ・初めて受診した日が記載されるため、初診日の証拠書類になります。
“初診の病院に今も通っている場合”
- 受診状況等証明書は不要で、診断書で代用できることがあります。
<受診状況等証明書> ※クリックで拡大
3.判断に迷いやすい5つのケース
「最初に医師等の診察を受けた日」といっても、どの病院が初診になるのかはっきりしないことがあります。
よくご質問いただくケースを、5つに分けて解説します。
3-1.病名が複数ある・診断名が変わった
障害年金の制度上、傷病名がちがっても「同一傷病」として取り扱われることがあります。
代表的なのが、うつ病と発達障害の組み合わせです。
「発達障害がベースにあって、そのうえでうつ病を発症した」という考え方が取られます。
“例:A病院でうつ病、B病院で発達障害と診断された場合”
- 発達障害で請求するときも、A病院のうつ病の受診日が初診日になります。
精神疾患では、ほかにも次のようなケースで同一傷病として扱われます。
- 適応障害など、別の傷病名で精神科にかかっていた(診断名の変更とみなされる)
- 頭痛や不眠で通院していたのが、現在の症状につながっていると判断された
- 内科や婦人科で抗不安薬・抗うつ剤が出ていた、または精神科の受診をすすめられた
「相当因果関係」でつながるケース
同一傷病ではなくても、前の疾病や負傷がなければ、後の疾病は起こらなかったと認められる場合があります。
これを「相当因果関係がある」といい、この場合は前の傷病の初診日で請求します。
典型例は糖尿病の合併症です。糖尿病で長年通院したあと合併症で失明した場合、眼科を受診した日ではなく、糖尿病で初めて病院を受診した日が初診日になります。
3-2.知的障害で請求する場合
知的障害の初診日は、出生日(誕生日)です。
知的障害は、うつ病や発達障害など他の精神疾患と併存することがしばしばあります。
このとき初診日の取り扱いは、知的障害の程度が3級以上か未満かで大きく変わります。
| 知的障害の程度 | 取り扱い | 初診日 |
|---|---|---|
| 3級以上 | 知的障害がベースにあってうつ病等を発症したとみなされ、同一疾病扱い | 出生日 |
| 3級未満 | 知的障害とうつ病等は関係ないとみなされ、別疾病扱い | うつ病等で受診した日 |
3級相当かどうかは、実務上IQ70以下かどうかでざっくりと判断されているようです。
なお、知的障害を持つ方が統合失調症を発症することはほぼないため、統合失調症は知的障害の軽い重いに関係なく、原則として別疾病として扱われます。
3-3.生まれつきの病気(先天性疾患)
知的障害以外の先天性の疾患(先天性心疾患や網膜色素変性症等)は、症状が出現して初めて診療を受けた日が初診日になります。出生日ではありません。
ただし先天性股関節脱臼だけは例外で、生育時点ですでに完全脱臼が認められている場合のみ、出生日が初診日になります。
完全脱臼が認められず、青年期以降に変形性股関節症が発症した場合は、初めて診療を受けた日が初診日です。
3-4.一度治って、また発症した(社会的治癒)
過去の傷病が医学的に治癒したあと、また再発した場合は、再発して診療を受けた日が新たな初診日になります。
とはいえ、うつ病やクローン病など完治することのない疾病では、医学的治癒は認められません。
その場合でも、数年間症状がなく、治療の必要もなかったことを根拠に、治癒が認められることがあります。
これを「社会的治癒」といいます。
3-5.年金機構に初診日を変更されることもある
社会的治癒や相当因果関係は、認められるかどうかの判断が難しく、実際に請求してみないとわからないこともあります。
こちらが主張した初診日を年金機構が認めず、変更してくる場合もあります。
特に判断が困難なのが、がんのようにさまざまな症状を引き起こす疾病です。
体の異変で治療を受けていて、他の病院で初めてがんと確定診断されたような場合、前の病院が初診になることが多いです。
しかし、原因不明の腰痛で病院を転々としていた方が総合病院の受診でがんと確定診断された事例では、確定診断された日に初診日を変更されたことがありました。
理由も確認しましたが、明確な基準があるわけではなく、症状や確定診断に至る経緯などによって初診となる病院が決まるようでした。
4.初診日が証明できないときの対処法
実務上、初診日の確定ができないトラブルはよくあります。代表的な5つの場面と、その対処法を解説します。
4-1.カルテがない・病院がなくなった
初診の病院に証明書を依頼しても、カルテが残っていなかったり、病院そのものが廃院になっているケースがあります。
その場合は「受診状況等証明書が添付できない申立書」という書類を作成し、「自分の初診日は何年何月何日です」と申し立てます。
制度上さらに、転院先の病院から受診状況等証明書を取得する必要があります。
ただしこの申立書は、あくまで自己申告です。そのため、なんらかの客観的な資料を添付して初診日を証明する必要があります。
初診日の裏づけになる資料の例
- 障害者手帳の診断書
- 診察券、お薬手帳
- 他の病院のカルテ(初診日が書かれていることがあります)
- 警察発行の事故証明
- 病院作成の計画書、サマリー
- 生活保護台帳
場合によっては第三者証明という書類を作成します。初診日当時に病院へ通っていたことを、第三者に証言してもらうものです。
20歳未満に初診日がある場合は、この第三者証明だけでも初診日が認められることがあります。
<受診状況等証明書が添付できない申立書> ※クリックで拡大
4-2.健康診断の記録しか残っていない
健康診断や人間ドックは、原則として初診にはなりません。
しかし、初診の病院にカルテがない等の理由で初診日の確定ができないときに、健康診断等の結果が残っていて、医学的見地から直ちに治療が必要な点が明らかである場合は、例外として健康診断の日=初診日と認められるケースがあります。
4-3.「この期間のどこか」と申し立てる
日付までは特定できなくても、病院が作成した書類や手帳の交付時期等の客観的な資料から、「平成18年の秋」というようにある程度の期間までは特定できる場合があります。
このとき、次の2つの条件を満たしていれば請求が可能です。
“期間で申し立てるための2つの条件”
- 期間内に納付要件を満たしていること
- 期間内に同じ年金制度に加入していること
この2つを満たせば「たとえその期間内のどの日であったとしても、障害基礎年金(障害厚生年金)の請求が可能」とみなされるためです。
なお、季節による申し立てが認められた場合は、その末日(冬なら2月末日、春なら5月末日、夏なら8月末日、秋なら11月末日)が初診日として認められます。
4-4.初診日が20歳より前にある
初診日が20歳未満にある場合は、20歳前の傷病による障害基礎年金として扱われます。
納付要件はありませんので、第三者証明などを用いて20歳前に初診があることさえ証明できれば、請求が可能になります。
「初診かわからないが、中学の時に〇〇クリニックに通院していた」といった、多少アバウトな証明でも認められることがあります。
ただし20歳前に厚生年金の加入期間がある場合は、初診日が厚生年金加入期間にあるか否かを明確にする必要があります。
4-5.初診日が18歳6か月より前にある場合の特例
初診日が18歳6か月未満だった場合は、何歳であっても障害認定日は20歳で固定になります。
このとき、18歳6か月未満の受診であることを証明できれば、2番目以降の病院から初診証明を取得しても良いとされています。
例:中学の時からA病院、17歳でB病院、19歳でC病院に転院した場合
- 原則はA病院から受診状況等証明書を取得します
- この特例により、Aを飛ばしてB病院から取得してもOK
- C病院は18歳6か月以降の受診のため、特例は使えません
“この特例が使える条件は以下の2つです。”
- 2番目以降の病院の初診日が18歳6か月未満であること
- 2番目以降の受診より前に厚生年金に加入していないこと
5.まとめ
初診日の手続き自体は、初診の日付を証明するというだけのシンプルなものです。しかし実際には、次のようなトラブルが数えきれないほど起こります。
- 初診の病院にカルテがない
- 初診の病院が廃院になった
- 初診の病院を忘れてしまった
- 初診だと思っていた病院に前医があって、書類の取り直しになった
苦労しながらもその後請求までたどりつける方はまだ良いのですが、お一人で悩んだ末にそのまま諦めてしまう方も多いようです。
初診日のことでお困りのときは、どうぞお気軽にご相談ください。ご相談は無料です。



