
障害年金では、「初診日」がいつになるかが非常に重要です。
初診日とは「障害の原因となった傷病について、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」と定義されています。
では、一度よくなった病気が何年もあとに再発した場合、初診日は最初にかかった日なのでしょうか。それとも再発して受診した日なのでしょうか。
ここで登場するのが「社会的治癒」という考え方です。
これが認められると初診日が後ろにずれ、もらえないはずだった年金が受給できたり、年金額が上がったりすることがあります。
“この記事でわかること”
- 「医学的治癒」と「社会的治癒」のちがい
- 社会的治癒が認められる4つの条件
- 認められると、どんなメリットがあるのか
- 逆に、認められると不利になるケースもあること
目次
1.治癒には2つの種類があります
障害年金には、次のような運用上のルールがあります。
「過去の傷病が治癒したのち再び悪化した場合には、再発として過去の傷病とは別傷病とし、治癒が認められない場合には、継続として過去の傷病と同一傷病として取り扱われる」
つまり「治癒したかどうか」で初診日が変わります。そしてこの「治癒」には2種類あります。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 医学的治癒 | 根治が可能な傷病が、実際に完全に治ったこと |
| 社会的治癒 | 医学的には治っていないが、外見上は治っている状態が一定期間続いたこと |
いずれの場合も、再発して病院を受診した日が新たな初診日になります。
2.社会的治癒とは?
精神疾患や難病など、根治する方法がなく「医学的治癒」という概念のない疾患があります。
そのような疾患は、基本的に増悪と寛解を繰り返すことになります。
たとえば、こんなケース
- 10代の頃、うつ病で精神科に通っていた
- 症状がよくなって就職し、その後20年間、普通に働いていた
- 最近になって、うつが再発した
うつ病は医学的に治癒することがないから、という理由で、10代の頃を初診日として請求しなければいけないのでしょうか。
そこで出てくるのが「社会的治癒」です。
社会保険の運用上、次のように取り扱われます。
「医学的には治癒していないと認められる場合であっても、軽快と再度の悪化との間に外見上治癒していると認められるような状態が一定期間継続した場合は、いわゆる社会的治癒があったものとして、再発として取り扱われる」
つまり医学的には治っていなくても、社会的に治癒していると認められれば、別傷病として取り扱われることになります。
2-1.社会的治癒が認められる4つの条件
過去の裁決例から、おおむね以下の条件を満たせば社会的治癒が認められるとされています。
“社会的治癒の条件”
- 治療の必要がなくなったこと(予防的医療は除きます)
- 自覚的にも他覚的にも病変や異常がみとめられないこと
- 一定期間、普通に生活または就労していること
- 上記のような状態がおおむね5年以上継続していること
端的に言えば、通院と通院の間が5年以上あいていて、その間普通に働いていれば、社会的治癒が認められる可能性が出てきます。
2-2.通院していても認められることがあります
過去の裁決例では、仮に通院があっても、それが予防的医療(経過観察や予防的な薬物投与だけだった場合)であれば社会的治癒を認めるとされています。
ただしその場合は、予防的医療であったことを何らかの形で証明する必要があります。
なお実務上は、あっさり社会的治癒が認められる場合もあれば、条件を問題なく満たしているのに認められず、再審査請求まで争ってようやく認められた事例もあります。反対に、5年未満で認められた事例もあります。
なかなか一筋縄ではいかない、という印象が強い制度です。
3.認められると、何が変わるのか
実務上、社会的治癒を主張するのは主に次の2パターンです。
| こんな場合 | 社会的治癒が認められると |
|---|---|
| ①最初の初診日では受給要件を満たしておらず受給できなかったが、再発後は要件を満たしている | 障害年金が受給できる |
| ②最初の初診日は国民年金加入中で、再発後は厚生年金だった | 障害基礎年金ではなく障害厚生年金が請求できる |
3-1.逆に、不利になるケースもあります
社会的治癒が認められることで、請求上かえって不利になるパターンもあります。
- 最初の初診日では納付要件を満たしていた
- その後、数年間病院に行かなかった
- 再発した時点では納付要件を満たしていない
この場合、年金機構側から「社会的治癒にあたる」と言ってくることがあります。
こうしたケースでは逆に社会的治癒の認定を避けるため、「受診はしていないが、通常の社会生活は営めていなかった」という主張を請求時点でしておく必要があります。
4.まとめ
社会的治癒は、うまく認められればもらえないはずの年金が受給できたり、年金額が上がったりします。
ただし、条件を満たせば100%認められるというものではありません。診断書の記載や病歴申立書の内容をしっかり作り込む必要があり、かなり難易度の高い請求になります。
また、請求のうえでは逆に「社会的治癒が認められないように」進めなければいけないケースもあります。
「もしかしたら、社会的治癒に当てはまるかもしれない」と思われたときは、一度専門家にご相談ください。ご相談は無料です。
