
障害年金の請求書類のなかで、ご本人が自分の言葉で書ける書類は1枚だけです。
それが病歴・就労状況等申立書です。
診断書は医師が書きます。受診状況等証明書も病院が書きます。審査する人にご自身の生活の実情を伝えられるのは、この申立書しかありません。
ところが、いちばん書くのが大変な書類でもあります。発病から現在までを、期間で区切って書くという独特の様式だからです。
“この記事でわかること”
- 期間の区切り方(いちばんつまずくところ)
- それぞれの枠に何を書けばいいか
- 審査で不利になってしまう書き方
- さかのぼって請求するときの注意点
目次
1.この書類の役割
申立書には、大きく2つの役割があります。
- 初診日を裏づける……いつ発病し、どの病院にかかったかを時系列で示す
- 日常生活の実情を伝える……診断書だけでは伝わらない生活の困りごとを補う
とくに精神の障害では、診断書の内容とこの申立書をあわせて読んだうえで等級が判断されます。診断書は医師が短い診察時間のなかで書くものですから、家での様子まで正確に反映されているとは限りません。そこを埋めるのが申立書です。
2.期間の区切り方
まず、発病から現在まで、途切れさせずに期間を並べます。空白の年があってはいけません。
2-1.区切りのルール
“この4つを守れば形になります”
- 病院ごとに1枠。転院したらそこで枠を変える
- 受診していない期間も必ず書く(空白にしない)
- 同じ病院に長く通っているときは3〜5年ごとに区切る
- それぞれの枠に受診したか/しなかったかを必ず記入する
区切りの例
- ① 平成28年4月〜平成29年2月 受診なし(発病〜受診するまで)
- ② 平成29年3月〜令和2年5月 A クリニック
- ③ 令和2年6月〜令和3年8月 受診なし(中断していた期間)
- ④ 令和3年9月〜令和6年8月 B 病院
- ⑤ 令和6年9月〜現在 B 病院(現在の状況)
2-2.先天性の場合
知的障害など生まれつきの障害は、出生時から書き始めます。
この場合、幼少期・小学校・中学校・高校……と学齢で区切ると書きやすくなります。就学時健診、支援学級、療育手帳の取得なども重要な記載事項です。
2-3.日付があやふやなとき
「たしか秋ごろだった」という程度しか思い出せないこともあります。
そのときは年だけ書いて、月日は空欄にしてかまいません。あいまいな記憶のまま日付を書いてしまうと、受診状況等証明書やカルテと食い違って、かえって説明を求められます。
3.それぞれの枠に書く内容
枠の性格によって、書く中身が変わります。
3-1.いちばん最初の枠
発病のきっかけと、受診するに至った理由を書きます。
- いつごろ、どんな症状が出はじめたか
- そのころの生活(仕事・学校・家庭)で何があったか
- なぜ病院に行こうと思ったか(誰にすすめられたか)
3-2.受診していた枠
次の流れで書くと、読み手に伝わりやすくなります。
“受診枠の書く順番”
- 受診した病院と、そこでついた診断名
- 受けた治療(薬の名前・入院・手術・通院の頻度)
- その後の経過(良くなったか、悪くなったか)
- 日常生活や仕事での困りごと
- 転院や退職をした理由
3-3.受診していなかった枠
ここを空欄にしたり「受診なし」の一行で終わらせてしまう方が多いのですが、この枠こそ丁寧に書く必要があります。
通院していない期間があると、審査する側は「治っていたのではないか」と受け取ります。通院していなくても症状は続いていたということを、ご自身の言葉で書いてください。
- なぜ受診しなかったか(お金がない、外出できない、薬が合わなかった、医師と合わなかった等)
- その間の自覚症状
- その間の生活・仕事の様子
- また受診することになったきっかけ
3-4.現在の枠
ここがいちばん重要です。日常生活のどこに、どのくらい支障があるかを具体的に書きます。
“この10項目を順番に確認してください”
- 食事(作れるか、栄養が偏っていないか、食べない日があるか)
- 身の回りの清潔(入浴、着替え、洗面、部屋の掃除)
- 洗濯・ごみ出し
- 買い物(一人で行けるか、店で困ることはないか)
- 通院と服薬(一人で行けるか、飲み忘れはないか)
- 人とのやりとり(家族以外と話せるか、電話に出られるか)
- お金の管理(支払い、預金、衝動的な買い物)
- 危険なことへの対処(火の始末、体調不良のとき)
- 外出(一人で行ける範囲、交通機関)
- いまも続いている症状
枠に入りきらないときは、「次項へ続く」「前項より」と書いて次の枠に続けてかまいません。
4.伝わる書き方のコツ
4-1.「どのくらい手助けが必要か」を書く
障害年金の審査では、できる/できないではなく、どのくらい人の助けがあればできるのかを見ています。
| 伝わりにくい | 伝わる |
| 料理はできます | 火を使うのが怖く、母が作った物を温めて食べています。週に2日は何も食べられません |
| 入浴はしています | 自分からは入れず、家族に何度も言われて週1回入る程度です |
| 通院しています | 一人では行けず、毎回姉に車で連れて行ってもらっています |
4-2.数字とエピソードを入れる
「週に○回」「1日○時間」「○年から」といった数字と、実際にあった出来事を入れると、状況がはっきり伝わります。
ただし、病気と関係のない出来事まで書く必要はありません。
4-3.調子のいい日を基準にしない
症状に波がある方は、調子のいい日のことを書いてしまいがちです。書類を書ける日は、たいてい調子のいい日だからです。
波があること自体が障害の状態ですので、悪い日がどのくらいの頻度で、どんな状態になるのかまで書いてください。
4-4.文体は一人称で
ご本人が話すように、「私は〜でした」という書き方で統一します。過去の枠は過去形、現在の枠は現在形です。
ご家族が代わりに書く場合も、本人が語っている形にそろえます(代筆した方の名前は所定の欄に記入します)。
5.やってしまいがちな失敗
“この5つに心当たりがあれば要注意”
- 症状だけ書いて、生活の支障を書いていない……「不安が強い」ではなく、不安のせいで何ができないかを書く
- 前向きに書きすぎている……「頑張っています」「迷惑をかけないようにしています」は、支障がないと読まれます
- 期間が飛んでいる……空白の期間は「治っていた」とみなされます
- 診断書と食い違っている……提出前に必ず診断書と読み合わせる
- 枠の途中で文章が切れている……「次項へ続く」で必ずつなぐ
とくに2つめは、多くの方があてはまります。謙虚に書くほど不利になるという、この書類の難しいところです。事実を控えめに書く必要はありません。
6.就労状況の欄
働いている方は、仕事の内容と、職場でどんな配慮を受けているかを書きます。
- 勤務日数・勤務時間・仕事の内容
- 障害者雇用か、一般雇用か
- 休みがちになっていないか(月に何日休んでいるか)
- 職場で受けている配慮(作業内容の限定、指示の出し方、休憩、支援員の付き添い)
- 仕事が終わったあと、家では何もできなくなっていないか
働いていること自体で不支給になるわけではありません。ただし配慮のない環境でフルタイムで働けていると読まれると不利になります。実際に受けている支援は、遠慮せずすべて書いてください。
くわしくは精神の障害年金|働いていても受給できる?をご覧ください。
7.さかのぼって請求するとき
遡及請求をする場合は、障害認定日ごろの状態も審査の対象になります。
“遡及請求で気をつけること”
- 障害認定日のころの枠は、当時の生活の支障を具体的に書く
- 認定日から現在まで、状態がどう続いてきたかが読み取れるようにする
- 一時的に調子が良かった時期だけを強調すると、そこで回復したと読まれることがある
もちろん、事実と違うことを書いてはいけません。ただ、期間全体を通した状態が正しく伝わるように書くことは必要です。書き終わったら、通して読み直してみてください。
8.まとめ
“この記事のポイント”
- 発病から現在まで途切れなく、病院ごと・3〜5年ごとに区切る
- 受診していない期間こそ丁寧に書く
- できる/できないではなく、どのくらい助けが必要かを書く
- 調子のいい日ではなく、悪い日の頻度と状態も書く
- 提出前に診断書と読み合わせる
この書類は、何度も書き直すのがふつうです。一度で仕上げようとせず、まずは思い出せることを書き出すところから始めてください。
書き方に迷われたとき、あるいは書いてみたけれど不安が残るときは、どうぞお持ちください。ご相談は無料です。
