
障害年金の請求には、大きく分けて2つのやり方があります。
ひとつは認定日請求。もうひとつは事後重症請求です。
どちらを選ぶかで、年金がいつの分から出るかが変わります。数百万円の差になることもあり、請求のなかでいちばん重い判断といっていい場面です。
“この記事でわかること”
- 認定日請求・遡及請求・事後重症請求の違い
- どちらを選べば損をしないか
- 事後重症請求にある「65歳の期限」
- 両方を同時に出しておく方法
目次
1.請求のしかたは3つ
正確には、認定日請求のうち時間がたってから出すものを遡及請求と呼び分けるため、実務では3つに整理します。
| 請求のしかた | どんなとき | いつの分からもらえる |
| 認定日請求(本来請求) | 障害認定日から1年以内に請求するとき | 障害認定日の翌月分から |
| 遡及請求 | 障害認定日から1年以上たってから請求するとき | 障害認定日の翌月分から(最大5年分) |
| 事後重症請求 | 障害認定日には軽かった/当時の診断書が取れないとき | 請求した月の翌月分から |
認定日請求と遡及請求は、中身は同じものです。障害認定日の状態で審査してもらう請求で、何年たっていても認定日の翌月分にさかのぼって支給されます。
事後重症請求は、さかのぼりが一切ありません。出した月の翌月分からのスタートです。
2.どれだけ差が出るのか
障害基礎年金2級(令和8年度・年額847,300円)の方で、障害認定日が5年前だったとします。
- 遡及請求が認められた場合……5年分の約420万円がまとめて振り込まれ、その後も毎年受給
- 事後重症請求の場合……さかのぼり0円。請求した翌月分からの受給
同じ病状、同じ等級でも、請求のしかたひとつでこれだけ変わります。
3.認定日請求(遡及請求)の条件
さかのぼって請求するには、次の2つが必要です。
“遡及請求に必要なもの”
- 障害認定日の前後3か月以内に受診した記録をもとに書かれた診断書
- その診断書の内容が等級(1級・2級・3級)に当てはまっていること
3-1.診断書は2枚必要です
遡及請求では、診断書を2枚そろえます。
- 障害認定日ごろの診断書(さかのぼり分の審査用)
- 現在の診断書(請求日から3か月以内。これからの分の審査用)
当時と今で病院が違えば、2つの病院にそれぞれ書いてもらうことになります。診断書の費用も2枚分かかります。
3-2.認定日の診断書が取れないとき
当時の病院が廃院になっていたり、カルテの保存期間(5年)を過ぎて破棄されていたりすると、認定日の診断書は書いてもらえません。
この場合は事後重症請求のみになります。「当時も重かった」と口頭で説明しても、診断書がなければさかのぼりは認められません。
4.事後重症請求の注意点
4-1.65歳の誕生日の前々日が期限
事後重症請求には年齢の期限があります。65歳の誕生日の前々日までに請求書が受け付けられていることが必要です。
1日でも過ぎると、どれだけ重い障害でも事後重症請求はできません。書類がそろわないまま誕生日を迎えてしまう方がいらっしゃるので、64歳になったら早めに動き出してください。
なお、認定日請求(遡及請求)のほうには、この年齢制限はありません。65歳を過ぎていても、障害認定日が65歳前にあれば請求できます。くわしくは障害年金は何歳まで請求できる?をご覧ください。
4-2.請求が遅れた分は戻らない
事後重症請求は、提出した月が起点です。「半年前から動いていたが、診断書が出てくるのに時間がかかった」という場合、その半年分は戻ってきません。
月末に書類がそろったなら、翌月まで待たずにその月のうちに提出するだけで1か月分(2級なら約7万円)が変わります。
4-3.初診日から1年6か月は必要
事後重症請求でも、障害認定日が過ぎていることが前提です。初診日から1年6か月たっていなければ、そもそも請求できません。
ただし人工透析や人工関節など障害認定日の特例にあてはまる方は、1年6か月を待つ必要はありません。
5.両方を同時に出しておく
遡及請求をしても、認定日ごろの診断書が等級に届かず、さかのぼり分だけ不支給になることがあります。
このとき、認定日請求だけを出しているとすべて不支給になってしまいます。今の状態は明らかに2級なのに、1円も出ないという事態です。
“必ずチェックしておきたい欄”
- 請求書の請求事由の欄で「障害認定日による請求」を選ぶ
- あわせて「認定日による請求が認められない場合は、事後重症による請求に切り替えることを希望する」にチェックを入れる
こうしておけば、さかのぼり分が認められなくても事後重症として審査が続き、これからの分は確保できます。
遡及請求をするときは、このチェックを入れないという選択はまずありません。
6.どちらで請求するかの判断
| あなたの状況 | 選ぶ請求 |
| 認定日の前後3か月に受診していて、当時も重かった | 遡及請求(+切り替え希望) |
| 受診はしていたが、当時は軽かった | 診断書を見てから判断 |
| 認定日のころは通院していなかった | 事後重症請求 |
| 病院が廃院・カルテが破棄されている | 事後重症請求 |
| まもなく65歳になる | まず事後重症で期限を確保 |
「当時は軽かった」と自己判断してしまう方が多いのですが、軽いかどうかを決めるのは診断書の内容です。ご本人の記憶より、当時のカルテのほうが重い状態を伝えていることもあります。
まずは認定日ごろの診断書を取ってみて、それから判断するのが確実です。
7.まとめ
“この記事のポイント”
- 認定日請求(遡及請求)は認定日の翌月分から、事後重症請求は請求月の翌月分から
- 遡及請求には認定日の前後3か月の診断書が必須。診断書は2枚必要
- 事後重症請求は65歳の誕生日の前々日が期限
- 遡及請求をするときは事後重症への切り替え希望に必ずチェックを入れる
- さかのぼれるのは最大5年分
さかのぼれるかどうかは、当時の受診記録が残っているかでほぼ決まります。ご自身では「無理だろう」と思っていたケースでも、調べてみると診断書が取れることがあります。
判断に迷われたら、書類を集め始める前にご相談ください。ご相談は無料です。
