
「交通事故で障害を負ったけど、慰謝料をもらったから障害年金はもらえないんですよね?」
「職場の事故で労災が下りたけど、障害年金はもらえるんですか?」
事故によっては、損害賠償金や労災保険の給付として障害年金と同じ趣旨のお金を受け取れるケースがあります。
その場合、障害年金の請求はできますが、二重取りにならないよう調整がかかります。
ただし、第三者の損害賠償金と労災保険の給付では調整の内容が変わります。順に解説していきます。
“この記事でわかること”
- 慰謝料は調整の対象になりません
- 損害賠償との調整には36か月の上限があること
- 労災の場合は障害年金が満額出て、労災側が減額されること
- 20歳前障害だけは例外で、障害年金が全額停止になること
目次
1.交通事故など(第三者行為)の場合
交通事故など第三者の行為が原因で障害を負った場合、通常は加害者から損害賠償を受けることができます。
そうすると「多額の損害賠償金をもらったから、障害年金はもらえないんじゃないか?」と誤解してしまう方が少なくありません。
損害賠償金と障害年金を同時に受け取ることはできませんので調整がかかるのは事実ですが、全期間について調整がかかるわけではありません。調整が終わった後は、障害年金が普通に支給されます。
1-1.調整対象になる損害賠償の種類
まず、受け取ったすべての損害賠償金が対象になるわけではありません。障害年金は生活保障なので、それに相当する種類の損害賠償金が調整の対象になります。
| 〇 調整の対象になる | × 調整の対象にならない |
|---|---|
| 休業補償 逸失利益 | 慰謝料 医療費や葬祭料などの実費分 |
1-2.調整には36か月の上限があります
調整は「損害賠償として受け取った額だけ、障害年金が支給停止される」という考え方で行われます。
例:加害者から逸失利益補償として100万円を受け取った場合
- 100万円分について障害年金が停止します
- 年金が月10万円だとすると、10か月分の年金が停止。11か月目からは普通に支給されます
ただ実際には損害賠償の額はかなり多額になることが多いため、支給停止期間に上限が設けられています。
| 事故の時期 | 支給停止の上限 |
|---|---|
| 平成27年9月30日以前 | 24か月 |
| 平成27年10月1日以降 | 36か月 |
仮に1億円の損害賠償金をもらっていたとしても、この上限が過ぎれば調整は終了し、障害年金が通常どおり支給されます。
“カウントの起点は「事故の翌月」です”
- このカウントは障害年金の支給開始日からされるわけではありません。あくまで「事故の翌月から36か月」です
- 事故から障害年金の受給権発生までは間があることが多いので、丸々3年間停止することはほとんどありません
- 通常の認定日請求であれば事故から1年6か月後に請求することになるため、調整期間は残りの18か月だけということになります
- 幼少期の事故で20歳から年金が支給された場合などは、すでに事故から3年以上経過しているためまったく調整がかかりません
1-3.実務上の手続き
第三者行為による障害の場合、請求書に「第三者行為」である旨をチェックし、次の書類を作成・添付します。
- 第三者行為事故状況届/同意書/確認書
- 事故が確認できる証明(交通事故証明など)
- 損害賠償の算定書や示談書など、受領した額と内訳がわかる資料
2.労災事故の場合
業務上の事故によって障害を負った場合は、労災保険から療養費や休業補償、障害補償などの給付が下ります。そして同じ障害を理由に障害年金を請求することもできます。
この場合、障害年金は満額支給され、労災給付のほうが一定の割合で減額されます。
2-1.調整対象となる労災給付
調整の対象になるのは、労災給付と障害年金の原因が同じ障害である場合です。別々の原因で障害年金と労災給付を受けていた場合、支給調整はありません。
| 〇 調整の対象 | × 調整の対象外 |
|---|---|
| 休業補償給付 障害(傷病)補償年金 | 療養給付など 労災給付に付随して支給される各種の特別支給金 |
2-2.労災年金と厚生年金等の調整率
受給している障害年金の種類に応じて、労災からの給付が減額されます。

例1:労災から年300万円、障害厚生年金+基礎年金が年100万円の場合
- 労災保険が73%に調整され、219万円に
- 給付額の合計は319万円(障害年金を請求したことで増えています)
例2:労災が年400万円の場合
- そのまま調整すると292万円となり、合計392万円。障害年金を請求することで収入が減ってしまいます
- この場合は労災給付と障害年金の差額に相当する100万円だけが調整され、合計400万円(従前と変わらず)になります
2-3.調整の例外
“① 20歳前障害による障害基礎年金”
- 初診日が20歳前にある障害基礎年金は、労災給付との併給が認められていません
- 同時に受給した場合、障害年金側が全額支給停止になります
“② 業務上の事故につき、事業主による補償がされた場合”
- 一部の個人事業など労災保険に未加入だった場合は、業務災害の補償は事業主が行うことになります
- その場合は障害補償との調整が行われ、障害年金は6年間支給停止になります
3.まとめ
「損害賠償金や労災給付をもらっているから、障害年金はどうせもらえないだろう」という先入観を抱いて、請求せずに放置してしまう方は意外と少なくありません。
しかし本文でも書いたとおり、調整がかかるだけで障害年金の請求自体は可能ですし、調整によってマイナスになることはありません。
「自分の場合はどうなんだろう?」「請求がややこしくて難しそう」と感じた場合は、一度ご相談ください。ご相談は無料です。
