
「手の障害で障害年金が出る」という話になると、たいていの方が「切断」を思い浮かべるようです。実際に片手を切断したら2級という認定基準もあります。
ですが実務上は「関節の動きが悪い」「筋力が落ちた」「麻痺で動きづらい」というご相談が大半です。
そしてこのような機能障害も、障害年金の対象になります。
なお、指の障害、人工関節については別の記事にまとめてあります。
“この記事でわかること”
- 切断の場合の等級(両腕=1級、片腕=2級)
- 関節の機能障害の4段階の評価
- いくつの関節がどの状態なら何級になるか
- 骨折後の変形(偽関節)でも対象になること
目次
1.切断障害(腕が切断された場合)
腕が切断された場合、必然的に指が使えなくなります。したがって等級の認定は 指の障害 の基準に従います。
| 切断した部位 | 等級 | 認定基準上の表現 |
|---|---|---|
| 両腕が切断された | 1級 | 両上肢のすべての指を欠くもの |
| 片腕が切断された | 2級 | 一上肢のすべての指を欠くもの |
腕を根元から失っても、手首から先で失っても、年金の等級は変わりません。
ただし 差引認定 を行う場合は、切断部位によって等級が変わる場合があります。
2.上肢の機能障害
機能障害の認定方法は、切断と比べると複雑です。
まず三大関節(肩・肘・手首)にどれくらい機能障害が出ているかを見たうえで、最終的に腕全体の機能障害の認定を行います。
2-1.まず、関節ごとに4段階で評価します
原則として他動可動域(関節が動く範囲)が通常からどれくらい減少しているかによって評価が変わります。
特に実務上は「全く用を廃しているもの」に認められるか否かが重要になります。
| 評価 | 関節の他動可動域 | 可動域以外の条件 |
|---|---|---|
| 全く用を廃しているもの | 可動域が1/2以下で、筋力も半減している | 筋力が著減または消失 不良肢位での強直 |
| 用を廃しているもの | 1/2以下 | 常時固定装具が必要な動揺関節 |
| 著しい機能障害を残すもの | 2/3以下 | 時に固定装具が必要な動揺関節、習慣性脱臼 |
| 機能障害を残すもの | 4/5以下 | 固定装具不要な動揺関節、習慣性脱臼 |
「強直」と「動揺関節」について
- 強直(固まってほとんど動かない状態)は、固まっている位置によって「良肢位」「不良肢位」の判断がされます。
例:肘が90度曲がって強直していればある程度日常生活に使えます(良肢位)が、180度の状態で強直していれば腕の機能がほとんど失われます(不良肢位) - 動揺関節(安定せず常にぐらぐらしている状態)は、固定装具がどの程度必要かによって評価が変わります
2-2.二関節が「用を全く廃したもの」なら、腕全体が該当
三大関節のうち二関節以上が「用を全く廃したもの」に該当した場合、その腕全体が「用を全く廃したもの」とみなされます。
たとえば、右肘と右手首について可動域・筋力がともに半減していれば「右腕の用を全く廃したもの」と評価されます。
“腕全体が「用を全く廃したもの」になった場合”
- 両腕が該当 = 1級
- 片腕が該当 = 2級
2-3.一関節だけ「用を全く廃したもの」の場合
| 状態 | 認定基準上の表現と等級 |
|---|---|
| 両上肢の一関節がそれぞれ該当(たとえば右肘と左肘) | 両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの → 2級 |
| 一上肢の一関節だけ該当 | 一上肢の機能に相当程度の障害を残すもの → 3級 |
2-4.関節が「用を廃したもの」の場合
| 状態 | 等級 |
|---|---|
| 三大関節のうち二関節が該当 | 3級 |
| 一関節だけが該当 | 障害手当金 |
2-5.筋力低下による認定基準
筋力が「著減」「消失」となっている場合、その関節は「用を全く廃したもの」と評価されます。
「半減」とされた場合は、次のような取り扱いになります。
| 状態 | 認定基準上の表現と等級 |
|---|---|
| 両上肢の一関節がそれぞれ「筋力半減」(たとえば右肩と左肩) | 両上肢に機能障害を残すもの → 3級 |
| 一上肢の一関節だけ「筋力半減」 | 一上肢に機能障害を残すもの → 障害手当金 |
2-6.その他の認定基準
- 一上肢の三大関節のうち一関節に著しい機能障害を残すもの → 障害手当金
- 一上肢の三大関節のうち一関節に機能障害を残すもの → 障害手当金にも該当しませんが、併合認定 の際に用いられることがあります
3.変形障害(偽関節・骨の変形)
長管状骨(腕の場合は上腕骨・橈骨・尺骨)が骨折した後、うまく治癒せず変形してしまう場合があります。
3-1.偽関節
骨折部が完全に癒合せず曲がってしまう状態を偽関節と呼びます。
骨幹部(骨の末端を除いた部分)にこの偽関節ができてしまった場合は、次のいずれかに該当すれば3級として認定されます。
“3級に該当する偽関節”
- 上腕骨に偽関節ができた場合で、運動機能に著しい障害を残す場合
- 橈骨と尺骨の両方に偽関節ができた場合で、運動機能に著しい障害を残す場合
いずれにも該当しない場合は、障害手当金相当となります。
3-2.著しい転位変形
偽関節まではいかないものの、上腕骨・橈骨・尺骨のいずれかに変形が出た場合です。
このとき、外部から観察できる程度(15度以上の湾曲)の変形であれば、障害手当金相当となります。
4.まとめ
「腕が全く動かない」「切断した」というレベルに達していなくても、年金は請求できます。
ただ、基準はやや難解です。特にご自身の腕の可動域や筋力について言われても、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。
「自分も該当するかもしれない」と思われたら、一度ご相談ください。ご相談は無料です。
